現地就活: サマーインターンガイド2025 (S24)

1.         はじめに

HEC Paris MBA日本人在校生ブログをご覧いただきありがとうございます。本ブログでは、ほぼ毎月様々なテーマでブログを更新しています。
今回は、主に欧州現地就職を見据えたHEC 9月入学生のサマーインターンについての記事となります。

本記事の執筆に至る背景として、いわゆるMBA採用を除いたMBA生の現地就活は非常にケースバイケース(国・地域/市場環境/当人の経歴/タイミング etc.)であり、いざ就活に臨む段になっても具体的なガイドなく手探りで進めるしかない、という状況を少しでも改善したい、という思いがあります。かくいう我々も諸先輩方からお話を伺うにつれ、皆さんが皆さん異なる経験を経て異なる意見をお持ちであることに困惑しましたし、本ブログに残っている諸先輩方の記事も含め生存者バイアスの掛かった定性的な情報であることも多く、全てを鵜呑みにできるものではありません。

こうした状況を踏まえ、本記事は我々の体験談だけではなく、就活を通じて見聞きした情報を可能な限り嚙み砕いて、「現地就職を目指したいHEC生はとりあえずこの記事を読んでおけ」といえるようなものとなることを目指しています。全ての就活はケースバイケースですが、本記事を読んだ方が現地就活の全体感を少しでも掴み、本記事を諸先輩方のお話を伺う際の判断軸として利用していただくことが叶えば幸いです。

2.         関連記事

前述の通り、本ブログにも各先輩方のサマーインターン・現地就活の体験談が多く存在しています。特に我々の一学年上の先輩方である、S23の方々の記事は非常に参考になりました。以下に関連記事として紹介させていただきます。

HEC ParisMBAサマーインターンについて
本記事の3. HEC 9月入学生のインターン概要 に相当する記事です。日本での選考の流れについても記載があり、とても参考になります。

フランスでのサマーインターンについて
フランスのスタートアップでサマーインターンの内定を獲得された先輩の記事です。ソースを含むポジションについての説明のほか、時系列ごとに整理されたTipsが非常に豊富に紹介されています。「フランスでの」と銘打たれていますが、フランスに限らず欧州内全体の就活に役立つと思います。

サマーインターン (フランス国外・欧州内)体験談
上記記事と同じ方の後日談。就活を振り返って大事だと思ったことや、インターン時の仕事・生活の様子が詳細に記されています。

3.         HEC 9月入学生のインターンについて


本章では、HEC 9月入学生を取り巻くインターンの概要について解説します。


3.1.      インターン実施期間

9月入学の場合、必修である基礎科目を行うTerm1/2 (9月~翌3月) と選択科目を行うTerm3/4 (4月~12月) を経て翌6月に卒業となりますが、このうちインターンを行う期間には以下の2つがあります。

Term 2 (or 3) 以降、Term 4までの期間 (入学翌年 4月 - 8月)

Term 3のカリキュラムの組み方は非常に自由度が高く、以下のような組み合わせにより3-6ヶ月の就労可能期間を捻出できます。
  1. Term 3をIntensive × 5で取り切り、またTerm 4に特定の交換留学先に進学する場合 (4月 - 9月の6ヶ月間)
  2. Term 3をIntensive × 5で取り切り、Term 4はSpecializationを受ける場合 (4月 – 8月 の5ヶ月間)
  3. Term 3 をCertificateとして、Term 4はSpecializationを選択する場合 (6月 – 8月 の3ヶ月間)
ただ、卒業後にフランスで就職したい場合は、4.1.で後述する理由からこの期間にインターンをすることが難しいケースもあり、選択的にフランス語学習に充てる学生も多くいます。

Term 4以降、卒業式までの期間 (入学翌々年 1 - 6)

フランス就職を目指す場合メインのインターン期間と言われています。もちろん1月以降オファーがあればインターンを経ずにフルタイム就職することも可能であり、特に日本ではこの期間のインターンはメジャーではないように思います。フランスでインターンを行う場合、卒業要件に「5月末時点でインターンの契約がないこと」が含まれているため、必ず契約締結の際にHECの担当者と確認することを強く推奨します。 
(この際、フランスあるあるで人によって言っていることが違うことがあるため、関係各所複数に確認することをおすすめします。)

3.2.      HECにおけるサポート環境

FTなどが出しているMBAランキングをよく見ている方は気づかれるかもしれませんが、実はHECは卒業生からのキャリアサポートへの満足度が低い学校の一つです。とはいえ、学校側も主に欧州就職に向けて支援はしてくれていますので、本章で紹介します。


Talentチームによる支援

o    キャリアウィークの実施

§  Term 1の初めにキャリアウィークと題した授業・ワークショップを開催してくれます。

§  ここで、MBA生の就活環境の概観や、CV/LinkedInのプロフィールの充実のさせ方といったことを指導してくれます。

o    キャリアコーチによる支援

§  Talentチームから選任のキャリアコーチが各学生に割り当てられ、キャリア面談を定期的に実施してくれます。

§  面接練習・CVの添削といった指導のほか、契約面でのチェックなど細かに対応してくれます。

o    キャリアフェアの開催

§  MBA Connectionなどといった大学でのキャリアフェアが行われ、HEC生に興味のある企業のリクルーターとネットワークできます。

§  MBA生専用のものと、グランゼコール生中心のものの双方ありますが、後者はフランス語ができないとあまり有益なものにはならない印象です。

また、学校側の支援とは別に、Student Clubがそれぞれ学生の就活に向けた活動をしています。

Student Clubによる支援

o    イベントの開催

§  会社訪問・アラムナイセッション・キャリアトレックといったイベントを開催します。

§  少人数開催のものが多い上、HECのアラムナイが参加するため、ネットワークの質は非常に高いです。

o    ポジションの紹介

§  各クラブが各々のコネクションで見つけたオープンポジションがたまに投稿されます。

o    CV/面接対策

§  こちらは少数ですが、例えばコンサルティングクラブは例年CVの添削やケース面接の対策のサポートを実施しています。

そのほか、選択科目や集中講義を開催する教授・ゲストスピーカー経由でポジションを見つける例もあるようです。総じて受け身でいなければサポート環境は充実していると思います。

 

4.         欧州インターン就活について

4.1.      インターンポジション概観

一口にインターンと言っても様々で、渡仏前の壮行会を開催しているような外資企業が募集するMBAインターン、大学院生全体を対象とするオープンポジションインターン、さらには本来はインターン採用を行っていないがコネでポジションを用意してもらう、実質的には有期雇用のようなインターンなどが挙げられます。以下に一般的なそれぞれの特徴を述べますが、オープンポジションはその他すべてのような形ですので、あくまで「MBA生が目指すようなオープンポジションだとこんな感じ」というイメージとしてご覧ください。

A screenshot of a computer

AI-generated content may be incorrect.

現地語要件について、「フランスのインターンはフランス語が必須」といった情報もありますが、私がインターン探しをした範囲では英語のみでOKなポジションも多く存在しました。ただ、MBAインターンはFinanceを除いて基本的に現地語必須な場合が多いので要注意です。各社が各国ごとの現地語要件をまとめているのでRecruiterに確認しましょう。ドイツも同様です。

また、ポジションタイプの差異とは別に地理的特徴もあります。この場合、国によって大きく事情は異なるため、その国でのインターン探しを行った経験のある方に情報収集することをお勧めします。以下に私の知識からフランス・ドイツ、そして比較のために日本のインターンの特徴を記載します。

A screenshot of a computer

AI-generated content may be incorrect.

HEC生に人気なフランス・ドイツの特徴として、フランスは基本的に6ヶ月前提(MBAインターン/スタートアップを除く)なのに対し、ドイツは3ヶ月程度でも募集している企業が多いことが挙げられます。また、日本は基本的にMBAインターンに行く学生が多いため相対的に給料が高い傾向にありますが、オープンポジションの場合フランス・ドイツのそれらと大差ない印象があります。

そのほかの国としてオランダ・ベルギーを選ぶ学生もいますが、ベルギーは有給のインターンが一般的でないなど各国ごとに特色があるので場所を絞る前に情報収集を推奨します。

 

4.2.      インターンを行う意義

上記評価項目とも重なりますが、多くの学生がインターンを行う理由として以下が挙げられます。

·         インターン先企業からフルタイム就職のオファーを獲得するため

o    最もイメージしやすい理由です。直接そのインターンのポジション・チームでなくとも、インターンを経て得たネットワークが活きてフルタイムのオファーを獲得した例もあります。

o    逆にサマーインターンがフルタイムに繋がらないことで有名な企業などもあるほか、そういった企業でも別のチームでポジションが得られたケースなどもあるため、この辺りは情報収集をお勧めします。

·         CVを充実させるため

o    特に未経験の業界 (コンサル/ラグジュアリー) でよく見聞きする理由です。

o    この場合、場所/業界/ファンクションのいずれかをずらしてでもインターンを探すことも多くあります。

§  : ラグジュアリーのFinance, Strategyに行きたいが、インターンではマーケ

§  : フランスのコンサルに行きたいが、インターンでは日本

o    少し違いますが、現地語が必須なポジションを目指す学生が語学学校に通う例も目的としては近しいです

·         在学中のキャッシュフローを確保するため

o    特に現地就職を目指すにおいては、「卒業後何ヶ月余裕をもって残れるか?」が大事な要素になるため、キャッシュフローの確保は重要です。

これらの理由のうちどれが最も重要か?によってどこの国の (日本/欧州)、どの業界の (希望業界/前職と同じ)、どの企業の (有名な大企業/スタートアップ) 、どのポジション (希望通り/前職と同じ) でインターンをすべきか?逆にどの軸を妥協してはいけないのか?が変わるため、自分がインターンをどのようにフルタイム就活に役立てるか?を検討すると良いと思います。

 

4.3.      インターンポジションの探し方

自分の中でサマーインターンを行う理由が明確化できたら、ポジション探しが始まります。とはいえ、インターンを行う理由もポジションを探したりネットワークしたりしながら変わっていくものなので、凝り固まりすぎないことも重要だと思います。

以下が、よく使われるソースとなります。このうち、オープンポジションインターンは採用難易度を数でカバーする都合上SNS / インターネットが中心となりますが、逆にコネ型インターンはネットワークの質がすべてとなる、などインターンのタイプごとに適したソースは異なります。

イベント・説明会

キャリアフェア (MBA Connection など)やオンキャンパス説明会

HECでの口コミ

Student ClubWhatsappや、学生同士の世間話、キャリアコーチからの紹介など

SNS / インターネット

LinkedIn、Handshake、MBA Exchange

ネットワーク

アラムナイ / 前職・同僚 / のコネやコールドメール


また、特にオープンポジションを
SNS / インターネットで探す場合、「ポストされてから2,3日以内」のポジションを集中的に探すことをお勧めします。理由は簡単で、オープンポジションの場合採用枠が少ない上にMBAインターンのように毎年大量に候補者と面接するなどといったことをしない企業も多く、最初の数百件の応募者にいい感じの候補者がいたらさっさと選考を締め切ってしまうからです。

 

4.4.      応募・選考プロセス

応募したいインターンを見つけたら、以下のステップで選考が進みます。

 1)  募集要項の確認

募集要項に記載されている要件 (期間, 要求経験, スキル, etc.) を読み、自分にフィットするか確認

2) CV / カバーレターの作成 -> 応募

要件を踏まえ、リクルーターから見て魅力的な候補者であるという印象を与えられるようCV / カバーレターを作成

多くの場合、業界・ポジションに合わせて2, 3パターンのひな型を用意しておき企業に合わせてちょっと変える、という形で省力化

オープンポジションの場合、体感97%はこの段階で落とされるため、経歴・志望動機はかなり具体的にしておく (個人的には、未経験業界の就活成功率が低い理由はここにあると思っています。その業界・ポジションそのものの経験でなくとも、例えば上流・下流の業界の経験がある、顧客として接したことがある、などがあればそれを具体的に書くとよいです)

3) 適正テスト (SPIみたいなもの) の実施

ない企業も多いですが、コンサル・テックなどではメジャーなようです

MBAインターンの場合、Whatsapp内で「○○のテスト受けた人いる?」というようなメッセージが流れるので情報収集しておきましょう

4) 面接

多くのケースで2回実施されます (筆者のように1回で終わるケースもあります)
企業によっては面接対策のコーチをつけてくれるケースもあるのでよく準備しておきましょう

5) オファー受諾・契約

フランスの場合、Convention de Stageという三者間契約を大学・企業と結ぶ必要があります。その他の国の場合は、通常の就活と同様二者間契約です。またこの際、家賃補助や通勤費、引っ越し代など交渉の余地があります。

5.         欧州インターン体験談

以下に、S24の日本人学生で欧州でインターンを行うことになった2名の体験談を掲載します。もしより詳細に聞きたい場合は、日本人サイトのお問い合わせ窓口からお問い合わせください。

5.1.      ドイツ × 製造業

プロフィール

希望業界

製造業

前職の経験

製造業

インターンの概要

ドイツ / コネ・有期雇用型 / 事業戦略

ソース

LinkedIn

 
インターン探しの流れ

①LinkedIn経由でアラムナイと繋がりコールしインターンについて聞く、②HECのキャリアフェアやイベントに来ている会社やHandshakeに求人が出ているポジションに応募、の二つの方向性でインターン探しをしました。また、志望業界・企業・アラムナイ・オープンポジション等をエクセルで表にし、優先順位をつけながら進めました。HECの先輩や同級生にも積極的に体験談について伺うようにしました。

結果的にで繋がったアラムナイの方に3か月間のインターンのポジションをつくっていただきました。に関してはLinkedIn経由だけで30人くらいの人と話したと思いますし、他にもクラブのイベントや展示会、キャリアフェア等でも積気になる会社の人とは積極的にネットワーキングするようにしました。については10社程度応募し、面接に呼ばれたのは2社でしたが最終的にオファーにはつながりませんでした。

結果的にインターンをもらった会社は前職の経験が活きる業界・ポジションでした。他に面接に呼ばれた
2社は全く関係のない業界だったものの、業種的に前職と少し関係があったのと、HECのキャリアフェアに来ていたのでそういった場合はやはり通過率は高くなるのかな、という印象です。



未来のHEC生に向けてアドバイス
就活のスタイルは人それぞれだと思いますが、私の場合はとにかくネットワーキングと志望業界・会社の優先順位を意識し、特に志望度の高い会社は複数人から話を聞く等していました。これは日本ではあまりないスタイルなので戸惑うこともありましたが、最初のハードルさえ乗り越えればアラムナイの方や、同じ学校でなくてもMBAを取得している方は快く時間を取ってくださる方が多かったですし、色々な方にお話を伺えるのはMBA生ならではの特権だと感じました。

これはキャリア関係の講座でもよく言われることですが、結果的にポジション獲得にすぐに繋がらなかったとしても得たネットワークは将来的にどこかで活きたりします。結局人対人なので、「インターンください!」というよりも、「あなたとあなたのキャリアについて教えてください!」というスタンスで話すのが良いと思います。


また、仮に希望していたポジションでのインターンが見つからなかったとしても、語学学習に勤しむ、旅行を楽しむ等している同級生も多くいます。授業等と並行してのインターン探しは精神的にも体力的にも大変な時もあるので、あまり気負いせずに頑張ってください!

 

5.2.      フランス × IT

プロフィール

希望業界

コンサル・テック

前職の経験

コンサル

インターンの概要

フランス / オープンポジション型 / 欧州HQのソフトウェア企業のセールス・マーケ系ポジション

ソース

LinkedIn

 
インターン探しの流れ

元々夏は別のことをやる予定だったのですが、諸事情でできなくなったため3月中旬ごろからインターン探しを始めました。とにかく夏の間パリに残りたかったので、フランス9:ドイツ1ほどの割合でインターンを探していました。別の大学の卒業生の方で、ドイツで現地就職された方が「合計300社くらい応募した」とおっしゃっていたことに感銘を受け、4月までに100社出すぞーという気持ちでとにかく応募しました。

数を稼ぐために行ったことは、①ポジション探しの高速化と②CV/カバーレターの標準化です。

①は簡単で、LinkedInのアラートを設定して毎日確認するだけです。また、「募集要項のこことここだけOKなら出す」「今日出た求人は多少条件がずれてても出す」というように応募の意志決定をめちゃくちゃ早くしたおかげで無理なく毎日1-2件応募できました。

②はテンプレートを用意するだけのことですが、コンサル用 / テック用A (財務会計系) / テック用B (金融系) / ヘルスケア系 の4つのを用意してこちらも120分くらいで作成できるようにしました。

結果4月頭に応募したポジション3つから面接に呼んでいただき1つ目で決めたので、応募 30 > 書類通過 3 > 内定 1社 というくらいのCVRでした。

書類が通ったところはすべて
MBA以前の職歴の中でその企業や製品の知識・経験があり、インターンでこんなことやるんだろうなというのをイメージできるくらい経歴とマッチしていたのに加え、いずれも募集開始してから1日以内に応募していたので、その2点が良かったかなと思っています。
 
未来のHEC生に向けてアドバイス
MBAの美談として、いわゆるトリプルジャンプ (場所、業界、ファンクションすべてを変える転職) を紹介されたり、とにかく熱意と行動量でキャリアチェンジをつかみ取った、といったような話を耳にすると思いますが、私が自分のインターン就活を一言で総括するならば「身の丈を知って身の丈に合ったところだけを狙った」ということに尽きると思います。

MBAの経験はとても重要なものですが、それ以前の5-10年にわたる職務経歴のほうがやはり現実味のある価値を感じてもらいやすいものだと感じました。ただ、それは「MBA前にXXXを経験していなかったからダメだ」ということが言いたいのではなく、「過去の経験を踏まえ卒業後に何を目指すか?」「過去の経験をどう価値に感じてもらうか?」ということをしっかり考えるのがよいのではないか、ということです。

先の見えない就活は大変ですし、私もフルタイムが確定しているわけではないのでまだまだですが、それでも欧州就職を目指す
MBA
の仲間はたくさんいますので、諸先輩方や同級生と話しながら自分のペースでがんばりましょう!

6. おわりに

いかがでしょうか?本記事が少しでも欧州現地就活の参考になれば幸いです。現地就活についてもっといろいろな話を聞きたい!などあれば、日本人サイトのお問い合わせフォームからお気軽にお知らせください。 

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