フランスでインターンを探して、働いてみた話
フランスでインターンを探して、働いてみた話
こんにちは。HEC Paris MBA、S25のGです。現在、パリのエネルギー企業でインターンをしています。
今回は、フランスでのインターン探しと、実際に働いてみて感じたことを書きます。
46件応募して、最後に効いたもの
フランスでのインターン探しは、正直かなり苦労しました。私だけでなく、同級生も苦戦していました。私はLinkedInや企業のウェブサイトから合計46件に応募。それと並行して、入学後はとにかく人に会い、話を聞き、ネットワークを広げていました。
支えてくれたのは MBAの友人たち、Energy Clubで出会った人たち、そして日本人アラムナイやフランスに来てから出会った日本人コミュニティの皆さんです。「同じ日本人」というだけで驚くほど親身に協力してくださる方が多く、本当にありがたかったです。
最終的には、パリの国際機関、エネルギー企業、ドバイの日系商社からインターンの機会をいただきました。特に国際機関とエネルギー企業の間では、めちゃくちゃ迷いました。いろいろな人に相談しましたが、最後に決め手になったのは、自分の興味と直感、そして「この人たちと働きたいか」でした。
振り返ると、実際につながった機会はどれもネットワーキングから生まれています。しかも、一番行きたかった今のインターン先との出会いは、同級生の友人による紹介がきっかけでした。ネットワーキングというと企業の人とつながることを想像しがちですが、学校の中で築く関係も同じくらい大切です。
MBAの最初のキャリアの授業で「仕事探しの8割はネットワーク」と言われたときは、正直、半信半疑でした。すみませんでした。今なら、めちゃくちゃ分かります。特に日本以外でインターンを探すなら、人とのつながりは本当に大きいと痛感しました。
もう一人、どうしても書いておきたいのが、HECのキャリアコーチです。私は彼女ととても馬が合い、些細なことから大きな決断まで、何でも相談していました。Energy Clubの活動も支えてくれて、アムステルダムでのキャリアトレックにも一緒に行きました。キャリアの話だけでなく、自分が今後何をしたいのか、その思いをたくさん共有できていたことも大きかったと思います。
インタビューに向けて、模擬面接をしてくれたうえに、「別の人の視点もあったほうがいい」と、ほかのコーチとの模擬面接まで設定してくれました。関係者への相談も含め、本当にたくさん助けてもらいました。今でもキャリアについて真っ先に相談したいと思える人です。HECに来て出会えてよかった人を3人挙げるなら、間違いなくその一人。彼女のサポートなしに今回のインターンを獲得するのは、難しかったと思います。
オファーをいただくまでには、実はあれこれ戦略も練ったのですが、書き始めると長くなるので、そこは今回は省略します。ここからは、実際にフランス企業で働いてみた話です。
職場は、想像以上にフランスだった
フランス企業で働いてみた第一印象は、「とてもフランス」です。コーヒーブレークが好き。おしゃべりが好き。そして、みんなオープン。仕事の話から雑談まで、会話があちこちで始まります。
私の知る限り、フランスの大きな組織の中で日本人は私一人。そのせいか、日本に関係する話があると、いろいろな人が声をかけてくれます。
たまに隣に座る、私が心の中で「過労死おじさん」と呼んでいる同僚。昔、日本に留学していたそうで、会うたびに「S、過労死という言葉を知っているか。日本人の過労死はあかんぞ」と言ってきます。私が夜7時ごろまで残っていると、「NO KAROSHI!」と叫んで帰っていきます。いや、言いたいことは分かるけど、もうちょっと小さい声で頼む。
日本人の奥様がいるフランス人の同僚も何人かいて、皆さんとても親切です。仕事を教えてくれるだけでなく、フランスでの生活についても気にかけてくれます。ご家族がこちらで暮らし始めたときの経験もあるのかもしれません。
ある日、面識のない同僚に「日本のお菓子があるから来て!」と呼ばれて行くと、そこには全然知らない同僚が7人くらい。置いてあったのは八つ橋で、急に「これ、説明して」と振られました。
「京都の、お餅みたいなお菓子です」
……それだけ? という顔をされました。ごめん。八つ橋、そんなに好きちゃうし……。
ワークショップで見た、仕事の進め方の違い
職場では、「日本の会社はとてもオーガナイズされているよね」と言われることがあります。最初は「そうですかね?」と思っていたのですが、それを実感する出来事がありました。
あるとき、部門のグローバル会議として、世界中から約30人が集まるワークショップが開かれました。主な担当者がパリ拠点にいなかったため、私は米国チームのリーダーから現地でのサポートを頼まれました。聞いていた仕事は、参加者の受付、会議室への案内、ランチ会場への誘導の3つです。
ところが当日、いざ始まってみると、ネームタグが足りない。会議室の空調も調整が必要。モニターとPCを接続しようにも、やり方が分からん……。気づけば「現地で起きること全部」の担当になっていました。え、受付と案内の話でしたよね?
そして会議開始から約10分後、Teamsにメッセージが届きます。
「ゲスト用Wi-Fiを30人分、設定してもらえる?」
いや、今!?
私も入社してまだ3か月。そもそも、Wi-Fiの申請をどこに頼めばいいのか分かりません。近くにいた人に聞き、その人から別の人につないでもらって、ようやく担当者にたどり着きました。
ところが、通常は2日前までに申請が必要とのこと。そらそうですよね。会議、もう始まってますもんね。それでも事情を説明して何とかお願いし、参加者全員の氏名やメールアドレスの登録も手伝いました。
ようやく30人分の登録を終えたと思ったら、約30分後にまた連絡が。
「Wi-Fiが遅いから、別のものに変えてもらえる?」
いや、さっきまで必死で設定してたんですけど!?(笑)
もちろん、こちらも対応しました。ただ、これはまだ始まりにすぎませんでした。
「暑いから空調を下げて」「用意したお土産が足りないから追加で調達して」「ネームタグを増やして」「今から到着する人を迎えに行って」「まぶしいけどブラインドの下げ方が分からないから来て」……。Teamsに次々と連絡が飛んできます。
最初は隣の会議室にいたのですが、途中からはワークショップ会場に張り付くことにしました。もう、そのほうが早い。飛んでくるタスクに、とにかく片っ端から対応していました。
そして2日目。前日の経験を踏まえ、朝からブラインド、空調、モニターを確認し、必要な準備も済ませました。この日は私にも終日参加必須のトレーニングがあり、会場は別棟。「何かあればTeamsで連絡してください」と伝えて、ワークショップ会場を後にしました。
トレーニング開始から10分後、Teamsの通知が鳴りました。
「I
need you」
嫌な予感しかしません。続いて届いたのは、「遅れて来るメンバーが数人いるから迎えに行って」という連絡でした。
そこからは、ゲストから届くプレゼントの受け取り(大きな段ボール4箱。台車を調達して取りに行きました)、再び止まった空調の対応、ランチ会場の地図探しと事前準備、追加のスナックと飲み物の手配……。さらに、本社内のテクノロジーハブ見学ツアーを担当する技術者から「ゲストが誰も来ないんだけど!」と連絡が。USマネージャーに確認すると、「謝ってきてくれる?」とのこと。ハブまで走って事情を説明し、謝罪して、ツアーの時間を調整しました。
結局、2日目も10分おきにTeamsが鳴り、そのたびに会場を飛び出していました。終日参加必須だったトレーニングの内容は、正直、何ひとつ覚えていません。覚えているのは、最初の10分で食べたクロワッサンとコーヒーの味だけです。
「炭酸水の瓶が、栓抜きがなくて開かない」「スピーカーが動かない」という連絡まで来ます。約100人が参加するトレーニングを受けながら、そのたびに別棟から本館へダッシュ。もう、汗だくです。
そんな中、国外にいる直属の上司からメッセージが届きました。
「米国チームのリーダーが、Sが素晴らしすぎる、彼女がいなかったら実現できなかったと言っているよ。さすが!」
いや、そうでしょうね!!!!(笑)
心の中でそうツッコミながら、また本館へ走りました。最後は無事にワークショップを終え、チームリーダーやメンバーたちと大きなハグ。Wi-Fiをはじめ、いろいろ助けてくれた社内の担当マネージャーともハイファイブしました。「大変やったけど、みんなでやり切ったな」と思えた瞬間でした。
おかげで、社内のいろいろな部署に知り合いもできました。受付、総務、食堂の方々まで。2日間走り回った結果、社内ネットワークが一気に広がったのは、思わぬ収穫です(笑)。
翌日、同僚に「昨日、めっちゃ走ってたね。オフィスで走ってる人、初めて見た」と言われました。あ、みんなは急いでいても走らずに対応するんや。そこにも文化の違いを感じました。まあ、私がせっかちなだけかもしれませんが。
もちろん、この一件だけで「フランス企業はみんなこう」とは言えません。ただ、この日は日本で慣れ親しんだ「事前に確認して、必要なものをそろえておく」という仕事の進め方を、改めて意識しました。同時に、予定外のことが起きても、その場で人を見つけて頼み、何とか前に進める力も必要だと感じました。
忙しい。でも、びっくりするくらい楽しい
ワークショップの話ばかりしていると、私の仕事がイベント運営に見えてしまいそうなので、ここからは本来の業務についても少し。
現在はグローバルの戦略に関わるポジションで、さまざまな国や地域のメンバーと仕事をしています。担当するのは、MBA前には経験のなかった産業分野です。覚えることは多く、仕事内容も当初想像していた範囲を超えて広がっています。忙しいのですが、びっくりするくらい楽しいです。
特に面白いのは、自分でロジックを組み立てて分析した市場情報が、その先の議論につながっていくことです。市場全体をどう捉えるか、各地域でどう展開するか、そして個別のプロジェクトでは何をするか。いろいろなレベルの議論に加わらせてもらっています。多国籍のメンバーと一緒に考え、仕事を進める毎日は、学ぶことばかりです。
数か月前には、この市場についてほとんど知識がありませんでした。それが今では、各地域のワークショップを任されたり、社内のいろいろな人から質問を受けたり、別のインターンのサポートを任されたりするようになりました。ワークショップを含めて社内に知り合いも増え、どうやら「Sはおもろいやつ」と思ってくれている人も結構いるようです。仕事の相談もしやすくなり、自分でも、数か月でこんなに環境が変わるのかと驚いています。
私が特に好きなのは、一緒に考えようとしてくれる文化です。業界知識が足りないときも、「私はこういうことを進めたい」「ここを教えてほしい」「そのうえで、こう役に立ちたい」と伝えると、周りの人たちが時間を取って協力してくれます。グローバルの仕事なのでフランス以外にいる人と働く機会も多いのですが、距離があっても相談しやすいと感じます。
以前、日本で働いていたころは長時間働くことも多く、「分からない」と言う前に、まず自分で徹底的に調べ、完璧な答えを用意しなければ厳しく詰められる。そんな環境にいました。今の職場でも自分で調べて考えることは大切ですが、分からないことを率直に聞き、自分の意見を伝えることも歓迎されます。
「そこがまだ理解できていません」「私はこう考えます」と言えば、そこから議論が始まる。意見が違っても率直に話し合える。しかも、国も文化も異なる人たちと、それぞれの視点を持ち寄って議論できる。この、ディベートを楽しむような文化は、私にはとても心地よいです。
日本を離れて気づいたこと
日本にいたころも、ずっとグローバルプロジェクトに関わっていました。ただ、今振り返ると、日本に拠点があり、日本人であること自体が仕事上の強みになる環境で働いていたのだと思います。
今はフランスにいて、その前提がありません。もちろん、日本での経験は私の一部です。でも、ここでは「日本人だから」という理由に頼らず、一人のメンバーとして意見を出し、仕事を任せてもらい、それを楽しめている。そのことが、私にはとても嬉しいです。日本で働き続けていたら、気づけなかった自分の一面かもしれません。
MBAの後、どの国で働いているのかは、まだ全く分かりません。でも今は、「日本を離れても、自分の力で人とつながり、価値を出していける」と思えるようになりました。数か月前の私には、まだなかった自信です。
46件応募してもなかなか決まらず、不安になった日もありました。それでも、友人やアラムナイ、キャリアコーチが手を差し伸べてくれた。そのご縁が、今度は世界中の仲間と一緒に仕事をする毎日につながっています。だからこそ、ここで学んだことを次につなげたいし、いつか私も、誰かの挑戦を後押しできる人でありたいと思います。
これからMBAや海外でのインターンに挑戦する皆さんへ。うまくいかない時期があっても、どうか一人で抱え込まないでください。人に会って、頼って、自分のやりたいことを言葉にしてみてください。思いがけないところから、道が開けることがあります。
私もまだ挑戦の途中です。次にどこへ行くか分からないからこそ、ワクワクしています。お互い、自分の可能性を決めつけずに、思いきり挑戦していきましょう!
写真は本文と全然関係ありませんが、この間走ったラ・パリジェンヌのときのものです(笑)。フランスに来てから走り始めたのですが、これがめちゃくちゃ楽しい!