在校生インタビュー Part2(台湾・金融業界出身)

HEC Paris MBAのダイバーシティを紹介する、同級生へのインタビュー企画の第二弾です。HECの直近のキャリアレポートによれば、卒業後の就職先について、国を変えた卒業生の割合は64%、業界を変えた割合は82%、職種を変えた割合は70%となっています。しかし、MBAの前後で国・業界・職種の全てを変えること(Triple Jump)は非常に難しいと言われています。今回は、そんな貴重なTriple JumperであるEstelleにインタビューを行いました。

Estelle-Chiao Chiu(September 2019 Intake、写真はキャンパス内のシャトーで撮影)

-今日は時間を割いてくれて有難う。HECの多様性を日本の受験生に伝えたく、Estelleに声を掛けさせてもらったよ。改めて聞く話も多いとは思うのだけど、まず簡単に、MBAに来る前の経歴を訊いてもいいかな?

勿論!私は台湾大学を卒業してMBAに来るまでの間、台湾のスタンダードチャータード銀行とシティ銀行で計4年間働いていたよ。シティ銀行ではManagement Associate Programという枠で採用されていて、トレーダーやインベストメントバンカーといった立場ではなく、部署横断のプロジェクトの仕事に携わっていたの。銀行業界は、今急速にDigitalizationが求められている業界で、私は法人・個人それぞれの決済システムのプロセス改善に関わるプロジェクトに、PMO(プロジェクトマネジメントオフィサー)として関与して、広く経営や組織の管理について考える機会に恵まれたと思う。

 -なるほど。全社横断的なプロジェクトに関与して、経営者に近い目線で会社の課題に取り組んだ経験がMBAを志すきっかけになったの?

MBAを目指した理由は色々あるけど、シンプルに言うと、自分の可能性を拡げてみたいと思ったから。それは2つの意味があって、1つは、大学卒業後、台湾の国内マーケットのみを意識して働いて来たので、より大きな市場を見る仕事をしたいと思ったこと。もう1つは、自分自身の興味関心によりフィットするような業界や職種がないかと思ったこと。私は元々ビジネスの他に、文学や言語等の人文科学の分野にも関心があって、銀行で働いた4年間を通じてビジネスに関する経験は得たけれど、残念ながら後者に対する興味を活かせる職場ではないと感じて。MBAを通じて、自分の興味関心が活きるポジションを探してみようと思ったのがアプライの動機かな。

 -自分のアイデンティティや価値観に合った仕事を探したいというのはすごく共感するな。より高い金銭的報酬を求めてMBAに来る人も勿論いるけれど、「より良い生き方」を模索しに来た人も結構いるよね。ちなみにMBAを目指すと決めてから、何故それがHECだったの?

Why HECね。私の場合は、まず消去法で地域を絞り込んだの。米国のカルチャーには個人的にあまり関心がなかったのと、学部時代に欧州に交換留学をして良い思い出があったので、最初から欧州スクールに行こうと決めていた。そこから更に、当時Brexitで先行きが不透明だった英国スクールも対象から外した感じ。

次にEU諸国の中からどう選んだか、という話なんだけど、長期的には、台湾発の良質な製品、良質なブランドをつくっていきたいという夢があって、世界に認知されるブランドや文化を持つ国に行きたいなと思ったの。端的に言うとラグジュアリー×テックの分野への関心だね。結果として、HECSDA BocconiESSECの3校を受験して、最終的には期間が長く、アジアのアラムナイネットワークが比較的強いHECに決めた。ちなみに同じフランスでも、INSEADはコンサルスクールの印象が強くて、あまりフィット感を感じずに受験してないよ。

-フランスとイタリアというとまさにラグジュアリー業界に強みがある国だね。Estelleはラグジュアリー系のCertificate※1)をとっていたよね。Elective期間に選択科目を4つ履修した上で、Certificateをとるのは大変だったんじゃないかと思うけど、実際とってみてどうだった? 

大満足!ラグジュアリー系のCertificateは、LVMHKeringがそれぞれスポンサーになっているプログラムの2種類があるけれど、私は後者のプログラムに参加したの。原則全てのCertificateには企業のスポンサーがついていて(※2、業界のプロフェッショナルが教鞭をとっているんだ。だから、企業や業界が今どういった課題を抱えているのか網羅的に理解した上で、現実に起きている特定の問題に対して解決策を考えていくプロジェクトに参加することが出来て、とても貴重な経験になったよ。ラグジュアリー業界の多くがフランスを本拠地にしているわけだけど、彼らが海外マーケットをどう見ているのか、例えばアジアに向けたマーケティング戦略の考え方や背景について学べるのも、興味深かった。時々、アジア人としては、間違った方向のマーケティングだなと思う内容もあったりして()

 ()

でもそれも、仕掛ける側の意図が分かる点で有益だし、自分のバックグラウンドを通じて彼らのマーケティング戦略を改善する余地があることを知れたのは良かった。Certificateはグランゼコールやマスターの学生も多く受講しているので、インターナショナルなバックグラウンドで比較的社会人経験の長いMBA生とは異なる、フランス人のドメスティックな価値観や自分より若い世代の考え方に触れることも出来たしね。この業界への就職に興味がある場合、企業に対して、業界構造や直近の課題を理解しているというアピールにもなると思うし、自分自身が業界に興味を持つ理由を確認したり、業界とのフィット感を試すのにも良い機会になると思う。勿論それは関連するニュースを読んだり、アラムナイと話すことを通じて得ることも出来るのだろうけど、プロジェクトを通じてより深い理解が出来たと思うよ。

-業界全体の特徴やビジネスモデルを把握する、業界とのネットワーク作りといった点でとても有益そうだね。でも最終的にEstelleは、ラグジュアリー業界ではなくて、Facebookでサマーインターンからのフルタイムオファーを貰ったね()

これは本当に偶然出会ったとしか言いようがないポジションなの() 本当に予想外の予想外。私は、簡単に言うと誹謗中傷やヘイトスピーチ、リベンジポルノ等の有害なコンテンツの取り扱いに関するポリシーを作る部署でインターンをしていたのだけど、こんなポジションがあるとも知らなかった。

サマーインターンを通じて、まず、会社のカルチャーに居心地の良さを感じたのね。Facebookはグローバルに展開している会社だけど、オープンで多様性があるカルチャーを持っていて、異なるバックグラウンドの従業員がそれぞれの視点を持って貢献しているの。その中でもこの部署の仕事は、テクノロジーと人文科学の組み合わせであって、自分にとって挑戦する価値のあるものだと思って。何年かかるか分からないけれど、この分野での仕事の経験を積んで、自分がやりたいことにもっと近付いていきたい。今は具体的なアイデアがあるわけではないのだけど、Facebookの持つ「安全なプラットフォームの提供」に関わるノウハウは汎用性が高いよね。冒頭に述べた夢の話の他に、私は女性やマイノリティのグループに対する支援を昔からしていて、彼/彼女らがもっと幸せになれる仕組みが出来ないか、今後も考えていきたいと思ってる。

-情報への信頼性が低下したり、イデオロギーの二極化が進む今の時代において、とてもエキサイティングな仕事内容だと思う。何よりMBAに来たことで、過去のキャリアとEstelleの興味や価値観に繋がる新たなポジションを見つけることが出来たというのは、喜ばしいことだよね。私はいつも色々な話を聞いているので、Estelleがこのポジションを得るのはとても自然なことのように感じた。

ありがとう。

-ちなみにこれはMBAフォーカス(HECの提供する就活サイト)で見つけたんだよね?

そうそう。HECのキャリアセンターには感謝しなきゃね。 HECでは入学直後から学生毎に担当のキャリアコンサルタントがついてくれるけど、相性の良いコンサルタントがつくかどうかは運に左右される部分もあると思う。その意味で私は運が良くて、自分のコンサルタントとはとても相性が良かったの。興味のある業界のアラムナイのリストを貰ったり、業界や企業情報に関する情報も提供して貰えたよ。あと、彼女はネイティブスピーカーだったのでFacebookに応募する時にもレジュメのチェックをお願いして、文法の修正だけでなくより良い表現のワードに修正してもらったりもしたかな。

-キャリアセンターは相性もあるけど、使い方次第だね。今日は、Why MBAからCertificateの話、将来の話、色々なトピックについて聞かせてくれて有難う!

<編集後記>

如何でしたか?国も業界も職種も変えたEstelleですが、彼女のWhy MBAPost-MBAの仕事との繋がりを感じて頂けたのではないでしょうか。MBAに来る前には知りもしなかったポジションとの出会いが、「台湾だけでなく世界を相手に働く」、「ビジネス×人文科学の領域で働く」という2つの大きな転換をもたらした点が印象深いです。本インタビューから、HEC Parisのダイバーシティや学生の雰囲気を少しでも感じ取って貰えたら幸いです。

1 Certificate;詳細についてはHEC Paris公式HP又は在校生ブログをご参照下さい。

2 今年からCDLCreative Destruction Labというスタートアップ支援のCertificateMBA生限定で開始されていますが、CDLには企業スポンサーはついていません。

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