在校生インタビュー Part3(アメリカ・コンサル/スタートアップ出身)

同級生紹介の第3弾として、今回はアメリカ人のVictor夫妻へのインタビューをお届けします。2人は大学で知り合い、夫婦そろってHEC Parisに留学しています。それぞれがMBA留学を決断した理由やアメリカから欧州に留学に来た理由、フランスでの生活等について、詳細に語ってくれました。

Kristina and Andy Victor:September 2019 Intake

―今日はありがとう。まず、MBAに来る前の仕事と、MBAに来た動機について教えてくれないかな?AndyはたしかTeslaに勤めていたんだよね。

Andy(A):そう、Teslaも含め、いくつかのスタートアップを渡り歩いていたよ。そうした会社にいる人からは、キャリア的に成功するためにMBAは必要じゃないとよく言われてきた。ただ、キャリアを歩んで責任が増えていく中、求められていることと自分のスキルセットにギャップがあると気づいたんだ。それに、仕事をしながら身につけられることもあるけど、それだけでは学べないことがあるとも思うようになって、仕事を一旦脇においてフルタイムで勉強できるMBAに興味を持ったんだ。自分のキャリアアップにMBAは必須ではないとは思っていたけれど、この先のキャリアを選択するのにあたってよりよい意思決定ができるようになるのは意味のあることだと考えた。

スタートアップに行っている人はMBAに来ることはほとんどないし、彼らはとにかく経験を重視するので、僕は自分がやりたいと思ったことをやろうと思った。MBAは自分がいま得たいと思っている経験や知識を得るために最適な場所だと思ったんだ。

 

Kristinaにも同じ質問をさせて。確か、フランスで仕事をしていたあとAccentureで働いていたんだよね。

Kristina(K):そうね。大学を卒業して、1年間、南仏の小学校で英語の先生をしていたの。フランス語もそのときに勉強して。そのあとAccentureに入って経営コンサルティングの仕事をしていたよ。私は主にGoToMarketの戦略立案と実行や、デジタライゼーションによるリカーリングビジネスの構築などのプロジェクトに関わってきたの。

Andy
とは違って、私の場合はMBAがキャリアの選択肢の中にいつもあって、大学にいたときからMBAに行きたいと思っていた。何年か働いて目指したいキャリアの方向性が見えたときに、足りないスキルが何かということが十分にわかってきたちょうどいいタイミングだったし、Accentureで経験を積んだことで、授業に貢献できそうなことも増えたと感じていたのもあったかな。

 

―なるほど。ということは、KristinaAndyMBAに行かないかと誘ったわけなんだね。

A:そうだね。MBAに行くことはKristinaのアイデアだった。彼女がそんな話をするまで、僕はMBAのことをあまり真剣に考えていなかったんだ。でも、彼女にそう言われて、なぜ彼女にとってMBAを取ることがそんなに大切なのか理解したかったし、自分がどうサポートできるか考えたくて、色々調べ始めた。そうしたら、MBAは僕にとっても意味のあることだと感じられるようになった。ちょうど同じタイミングで、さっきも言ったように、仕事をしている中で壁を感じていて、それに対してMBAが何か助けになるんじゃないかと思って受験することに決めたんだ。だから、Kristinaがきっかけだね。

 

―ありがとう。次に、アメリカにもビジネススクールはたくさんあるけれど、なぜヨーロッパの学校にしたのかな。

K:まず私から答えるね。HEC Parisは私たちが受験した学校の中で唯一と言っていいくらいインターナショナルなスクールだった。他には学生数の少ない地元(カリフォルニア)の学校を受けていたの。HEC Parisはアラムナイが熱心にプログラムのことを紹介していて、それがすごく印象に残った。他の学校は事務的に「これがうちのMBAです」くらいの紹介だったから。

  それで、UCバークレーにも合格したんだけれど、その場合、一人はバークレーに行き、もうひとりは別のプログラムに行く必要があった。一方で、HEC Parisは私たち二人にオファーを出してくれたの。それに、シリコンバレーにいるプロフェッショナルはバークレー卒がたくさんいる中で、自分たちも現状維持で同じところで暮らすのがいいのか、それとも新しい冒険として多様な学生のいる環境でグローバルな経験を積むのがいいのかを考えたの。私たちは冒険することを選んだ、という感じ。

A:もちろん、他の国際的な知名度のある学校も見たんだ。LBSとか、INSEADとか、スペインのビジネススクールもね。でも、Kristinaが言ってくれたようにアラムナイが非常に熱心だったし、そのつながりも小さいけれど強いように感じた。Kristinaがフランス語を喋れるのも幸いしたね。彼女が経営コンサルティングのキャリアを歩む上で、HEC ParisStrategy Specializationがあるのは良かった。僕はStartupのキャリアを歩むつもりだったから、スタートアップやイノベーションの授業が充実していたことも理由の一つ。

HEC Parisはリーダーシップの経験が積めそうだと思ったことも決め手の一つだね!今年は残念ながらコロナの影響で出来なかったことも多いけど。そういったことは他の学校では提供されていないと思ったし、実際に経験できることがたくさんあってよかったと思う。

 

―そうすると、MBA後のキャリアは、はじめからアメリカに戻るつもりだったのかな。 

K:そう、アメリカに戻るのははじめから考えていたことだった。家族もアメリカに住んでいるし、私たちの愛犬もいるしね。今は実家に預けているけれど。Accentureに戻ってキャリアを進めるか、シリコンバレーのテック企業に進もうかなって。Andyもスタートアップの世界に戻るつもりだと思う。クラスメイトの中には働く場所をヨーロッパなどに移す人たちもいて、それはすごいことだなと思う。もちろん、私たちもヨーロッパで生活することを考えて、どんなキャリア機会があるかを見たけれども、私たちはこれまでの仕事を好んでいたし、アメリカに戻ることが一番いいオプションだと感じた。

 

―じゃあ次に実際に入った後の話について教えてほしいな。実際にキャンパスに暮らしてみてどうだった?

A:キャンパスライフは今の所すごく気に入っているよ。特にここ(Jouy en Josas)はパリの郊外で、他にはなにもないから、クラスメイトとの距離が近いのはいいことだね。夜にいろいろ遊ぶには不便なところだけどもね。でもそのおかげでクラスメイトとの絆は深まっているんじゃないかな。ここでのカルチャー・アクティビティは多いし…そうそう、Japan weekは楽しかったよ!日本酒を味わい、手巻き寿司を作れたのも良かった。他にも学生が主催するダンスイベントやヨガ教室に参加して、クラスメイトの知らない一面を見ることが出来たのも良かった。僕はそれにPbar(※キャンパス内にある学生運営のバー)の運営にも携わっていたから、疲れることもあったけれどいろいろな人と知り合うことができるいい機会にもなった。

  欠点はやっぱりパリから距離があることだね。僕らは週1,2回、パリに行くようにすることで、キャンパス暮らしを納得させていた。パリは有名な美術館に美味しいご飯がある素晴らしい街だ。もちろん、コロナの影響でそれらが制限されていることは残念だけれどね。

K:私も同じ意見。キャンパスの中にこれだけインターナショナルな学生が暮らして一緒に勉強したりできる環境は他の欧州の学校にもないんじゃないかな。そうした経験はすごく良かったと思う。

 

AndyWine & Spirits Clubの代表もやっていたよね。そこでも経験も教えてもらえるかな。

A:もちろん。僕がこのクラブに興味を持ったのはボルドーワインを体験するクラブトレックに参加したから。代表になってからは、メキシコのメスカル酒を作っている人を招いてテイスティングイベントをやったんだ。彼はメスカル酒の特徴だけじゃなくて、なぜこの会社を作ったのか、ヨーロッパでこのブランドを立ち上げることの難しさなどを教えてくれた。楽しいだけじゃなく学びのあるセッションだったよ。もちろん、ワインのテイスティングイベントもやったよ。

  シャンパーニュのメゾン(Veuve Cliquot)とのプロジェクトが出来たのも良かった。J20Wine & Spirits Clubの代表と一緒にプログラムもつくりあげて、Certificationがもらえるものにできたね。いずれのプロジェクトも楽しみながらできたから良かったよ。

(左:メスカル酒ワークショップの様子 右:モエ・エ・シャンドンにて)

―やっぱりお酒が好きなんだね。

A:僕らはナパ・ヴァレーから1時間半くらいの場所に住んでいたからワインはもちろんのこと、僕はテキサス出身だからウイスキーにも興味があった。HEC Parisに来て初めてのイベントで、世界中のワインやお酒を集めて飲む会に参加したのは良かったね。クラスメイトが世界中のお酒を持ってきて、もちろん日本酒もあったし、アルバニアのお酒、ベルギービールもあった。クラスメイトのおかげでそうした世界中のお酒を楽しめた。僕らも、ワインツアーと称してヨーロッパのいろいろなところに旅行してはその地のワインを楽しんでいたよ。

 

―ありがとう。話は変わって、これまでのHEC Parisでのキャンパスライフで何が印象に残っているかな。

K:私はThanksgivingイベントをやったことね。私たちで、お客さん200人の食事を用意して振る舞ったのは楽しかった。私は学校でThanksgivingをやりたくて、私たち二人が中心になって準備ができた(※夫妻でターキーを準備していた)のはカップルであることの良いところだったかな。North Americansのチームで、アメリカ人がとても大切にしているこの行事を、伝統的な食事で他のクラスメイトに振る舞えたのはすばらしい経験だった。

Thanksgiving party

A:そうだね。あれは良かった。じゃあ僕は授業の話をしようかな。トップスクールに来たからには良い教授に巡りあえると期待していて、それは予想通りだったよ。JeremyMicroeconomicsでのパッションある授業は彼がコーディネートしているSustainability Specializationを選ぶきっかけになったし、Corporate FinanceDennisの授業も印象に残っている。

あと、旅行もいい思い出だね。アメリカは他の都市や州に行くだけで何時間もかかるけれど、ヨーロッパは同じ時間でいろいろな国に行けるのが良かった。前半の
2タームは忙しかったけれど、後半はフレキシブルにあるのでいろいろなところに行ったよ。

 

パリの有名店・Tour d'argent(トゥール・ダルジャン)にて

―どれくらいの国を旅行したの? 

K:フランス含めて11カ国かな。夏にスペインやポルトガルの都市をたくさん回ったけれど、都市ごとに違う文化を深く知れたのは良かったね。

A:インターンシップをやらない代わりに僕らは旅行することを選んだんだ。一生に一回あるかないかの機会だからね。

 

―最後に、MBA後のキャリアプランについて聞かせてもらえるかな。さっきの話ではふたりともアメリカに戻るということだったけれど、どんな仕事をしたいかとか、そんなことを聞きたい。

A:もちろん。スタートアップにいたとき、僕は営業、カスタマーサポート、オペレーションといった業務に携わっていた。次のキャリアが必ずしもスタートアップでなくても良いけれど、いつも変化がある仕事に就きたいね。職種で言えばオペレーションかな。顧客に価値を提供するにあたって、会社の仕組みやプロセスをうまく変えられる仕事がいいなと思う。プロダクト、エンジニアリング、カスタマーサポートの間をつなぐ仕事、もしかするとマーケティングもこうしたハブの役割を担えるのかもしれない。そうした異なる職種の人達を繋げる仕事を通して、世界にインパクトを与えられることがやりたいね。

Tesla
にいたときはEV(電気自動車)を世界に広める仕事だったし、別の会社にいたときはインターネットをより安い値段で提供していたんだけど、そんな風に世の中にインパクトが出せる仕事がいいなと思う。ヘルスケア、ソーシャルインパクト、環境系の仕事なんかもそうだね。そうした気持ちは、サステナビリティのSpecializationCreative Disruption Labを受けるようになってから強くなったね。

 

―会社の規模はあまり関係なく?

A:そうだね。成長ステージにある会社がいいな。僕がTeslaに入ったときにはすでに従業員が1,000人いて、今や数万人になっている。そのくらい激しく成長しているところにいると、一つの会社にいながら短時間で様々な仕事を経験することができるんだ。もちろん大変ではあるけれども、楽しいと思うことが多いね。

 

―起業は考えたりするの?

A:もちろん考えたことはあるけれど、正直自分が「これだ!」と思えるアイデアを今持っているわけではないんだ。もちろん、考えて続けているけれどもね。

 

―そうなんだね。じゃあKristinaにも同じ質問を。Accentureに戻るという話をしてくれていたね。

K:ええ。今の会社は休職扱いになっていて、アメリカに戻ったら復職する予定になっているの。だから、社内で昇進してシニアマネジャー、パートナーになることが次の目標になるね。もちろん、ベイエリアの大きなテック企業も見ているよ。その場合にはマーケティングの仕事がいいかな。Accentureでも大手のテック企業をクライアントとしていて、GoToMarketやキャンペーンの実行を手伝っていたから、そうしたマーケティングの仕事は続けたいと思っているよ。

 

―確かにAccentureMarketingのプロジェクトを最近たくさん受注しているよね。日本でも広告会社を買ったりして、かなり積極的だなと思っていた。

K:そうね。こちらへ来てようやく気づいたんだけれど、Accentureは世界中で様々なことをしていて、ベイエリアでは経営コンサルティングにフォーカスしている一方で、ヨーロッパではITコンサルティングのイメージが強いみたい。もちろん、テクノロジーに関係しているすべてのことをやっているわけなんだけれども。でも私の部署はクライアントのマーケティング活動のサポートにフォーカスしていて、Accentureの中でもかなり新しい取り組みみたい。だから、このサービスをグローバルに展開する仕事ができると面白いなと思う。

 

―ありがとう。最後にHEC Parisへの留学を考えている人たち伝えたいことはあるかな。 

KTECThe executive committeeという活動があって、MBAの間にこれに関わるのはとても大変だけれど参加することをお勧めしたいね。自分のことを内省する時間になるし、プライベートとプロフェッショナルな目標のバランスを考える機会を、12人のクラスメートと共に持てるのはお互いを深く知れるしとても良かった。これも私の思い出に残っているので、HEC Parisに入学する人にはぜひ検討してもらいたいな。


―今日は本当にありがとう!色々と話が聞けて本当に良かった。また話ができるのを楽しみにしているよ。


●編集後記

当初、Victor夫妻のギリシャ旅行帰りにキャンパスで行うはずだったインタビューでしたが、旅行中にフランスが2回目のロックダウンになり、夫妻がギリシャでの滞在を延長したため、急遽Zoomで行うこととなりました。
Andyとはグループワークのチームが同じでしたが、ワークだけではわからない様々なエピソードをインタビューから知ることが出来ました。お互いを理解し尊重しあいながらMBAという場で切磋琢磨する、さわやかなカップルという印象を皆さんも強く持つのではないでしょうか。

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