HEC Certificates (Inclusive & Social Business)について
本投稿では、HEC Certificatesの一つである「Inclusive & Social Business」について紹介します!
HEC Certificatesとは?概ね4月中旬から5月下旬まで実施される1か月強のインテンシブなプログラムで、MBAだけでなくHECの他のMasterや外部の学生も参加します。アカデミック色が強い通常クラスとは異なり実務家が講師となってより実践的な内容の講義を提供します。2024年は、以下の11のCertificate programsが開講されました。
2024年は、以下の11のCertificate programsが開講されました。
・Climate & Business(with Schneider etc.,)
・Inclusive & Social Business(with Danone, Schneider, Ashoka etc.,)
・Strategy for Impact(with Mazars)
・Data Science for Management(with Natixis)
・Energy & Finance(with Société Générale)
・Mergers & Acquisition(with Credit Agricole)
・Private Equity & Infrastructure(with Bain & Co)
・The Future of Money and Payments(with Worldline)
・Entrepreneur ship in a Digital Age(with founders)
・Engagement & Commitment inspiring Excellence(with LVMH)
・Influencial Luxury(with Kering)
最大の特徴は各Certificateに企業がパートナーとして参画している点です。フランスを代表する企業が直面する(してきた)課題についてプロフェッショナルから直に学ぶことができるのはHECならではの貴重な機会ではないかと思います。Certificateによっては社員による講義だけでなくオフィスを訪問する様なプログラムもあり、ネットワーキングの機会としても魅力的です。
選考スケジュール
10月:各プログラムの説明会(オンライン)
11月:応募締切:第1-3希望までを選択し、CVとエッセーを提出
12月:合否発表
翌4月:プログラム開始
<注意点>
・エッセーはプログラム毎に提出する必要があります。
・HEC Certificatesを受講する場合、単位取得の関係から、ElectiveやCDL(別ブログご参照)は受講できません。
・January intakeの場合、1年目の4-6月はTerm2の必修授業があるので、卒業直前の5月に受講することになります。
Social & Inclusive Business Certificate
その名の通り、PovertyやDisabled、Refugee等で苦しむ人たちに対して企業がどうアプローチしていくかを体系的に学ぶプログラムです。自分は企業による雇用創出という側面に関心が強かったので、このCertificateを第一志望として応募しました。
主にTheoretical part/Experiential learning partの2本柱で構成されており、DanoneやSchneiderといったフランスの大手企業の他、AshokaやAction TankといったSocial Business支援企業、NPO等がパートナーとして参画しています。
プログラムスケジュール
・2024年は4/22~5/31に開講。土日祝日はお休み。勿論MBAT期間もお休み。
・平日は基本的には午前3hr+午後3hrというインテンシブなカリキュラム。
・週1回のField ProjectのGroup Workの日はGroupの進捗によるが1hr程度のみ。
参加者の構成
2024年は総勢19名と少人数で開講されました。内訳は以下のとおり。
lプログラム別
MBA2名(S23 2名)、EMBA1名、他Master9名、Non-HEC7名
l国籍別
アフリカ4名、フランス3名、その他欧州中東3名、中国3名、北中米2名、南米1名、インド1名、東南アジア1名、日本1名
プログラムの内容
1.Theoretical part
主に講義形式で、様々な角度からInclusive businessについて理解を深めていきます。Social Impactの測定やSocial Finance等の理論から、大企業によるImpact投資のケーススタディやSocial entrepreneurによるFounder's historyの紹介等の実践的な勉強まで、非常に中身の濃い内容となっています。大まかに紹介すると以下の通りです。
・Introduction(14h):企業訪問、Dannoneケース、貧困の定義等
・Multinationals & Low-income Communities(12h):
Veoliaケース、大企業によるImpact投資、Low-Income marketへのアプローチ等
・Social Entrepreneurship(10h):
社会起業家による講義(Street Childrenへの教育支援、Social business向けVC等)
・Inclusive & Social Finance(10h):
Impact投資、Micro Finance理論等
・Methods & Tools(17h):
ビジネスモデルの紹介、Social Impact測定、貧困層の心理学等
・Access To(22h):
大企業、NGO、教育機関、病院等各方面からのSocial businessへのアプローチ紹介
・Wrap-up(5h):
社会起業家との座談会と振り返り
クラスの内容としては、事前にケースを読んできて冒頭に理論の説明、後半でグループディスカッション→解説、という流れが一般的でした。ビジネスバックグラウンドの学生が少ない(他MasterはSustainable専攻が多い+就業経験のある学生は少ない)ので、理想論に偏り過ぎずビジネスの観点から意見を述べることが自分に期待されている印象でした。
著名な社会起業家のDaniela Papi-Thorntonさんが言っていた「すぐに解決できそうな表面的な問題ではなく、社会システムを変えられるようなIssueに取り組むべきだ(意訳)」と言うメッセージは非常に印象に残っています。それ以外にも社会起業家の皆さんは情熱的で真に社会を変えたいという思いで行動している人が多く、話を聞いて非常にモチベートされました。
2.Experiential learning part (実習3日、準備5日)
1グループ3-4人で5つのグループを作り、グループ毎にアサインされたNPOと協同してNew Business modelを提案します。Certificateの開講初日は、19名全員でSocial businessに注力している物流会社(NPOとのJV)の倉庫を訪問しHEC Alumniの話を聞いてフランスにおける失業者支援の仕組み等を学びました。フランスには長期失業者や難民等に就業の場を提供する企業を政府が支援する仕組みがあります。この物流会社もその仕組みの中で活動する会社の一つで、失業者に最大2年間の雇用契約で職業訓練の場を提供し、OJTに加えてフランス語の習得機会を設ける等安定した職業に就くための就業支援を行っています。
その翌日から3日間は同様のスキームでSocial businessを推進するNPOをグループ毎に訪問してヒアリングや実務訓練を行いました。筆者のグループ(カナダ人、インド人、コートジボワール人、日本人)は家電のリサイクル・販売業を営むNPOを担当しました。この3日間の実習で得た知見をベースに新規事業の検討を進め、Certificateの最終日(5/31)に教授や企業担当者の前でFinal Presentation(Jury)を行う流れとなります。(10枚程度のExecutive Summaryも提出)
機密保持の関係もあり詳細は書けませんが、今まさに企業が取り組もうとしている新規事業について、Social ImpactとBusiness Profitをいかに両立するかという観点で検討を進めるのは非常に面白くやりがいのあるプロジェクトでした。Action TankというSocial businessに特化したコンサルティング会社の担当者からも定期的にアドバイスを頂くことができ、通常のプログラムでは経験できない貴重な機会となりました。
その他振り返り
他Masterの学生やHEC以外の学生と接点を持てたことも大きなTakeawayの一つでした。20代半ばくらいのビジネス経験の浅い学生とチームを組むので、経験のあるMBA生はリーダーシップをとることが期待されています(クラスでも積極的な発言が求められる)。ある程度同じ前提を共有しているMBA生とは異なるメンバーでグループワークをする難しさや、ビジネスのことは人より知ってて当然という期待値の中でワークを進めていくのはそれなりにタフでしたが、非常に得難い経験となりました。(例えば私はHR経験しかないですが、競合分析やコスト計算をして価格設定を提案しました。)
また日本人が少ない環境もMBAとは違った面白さがありました。(S23入学の場合、普段はクラスに7-8名は日本人がいる。)他Masterには日本人と会うのが初めてという学生も多く、日本に強い興味を持ってくれていたので積極的に交流を深めることができました。当初予定されていた企業とのネットワーキングイベントがキャンセルになったのは残念でしたが、それを補って余りあるTerm3となりました。(少人数のクラスなのでクラス後に講師と親しくなることもできました。)
自分はこのCertificateを通じて大きく考え方が変わり、同じ起業をするにしてもSocial Impactを意識したビジネスに取り組んでいきたいと考えるようになりました。他のCertificateに参加した同級生の話を聞いていても満足度は非常に高い印象なので、ご興味を持った方は是非受講してみて下さい!どなたかの参考になれば幸いです。