コロナショックーHECへの影響

今回は空前絶後の世界的危機となっている、新型コロナウィルスのHECへの影響についてお伝えいたします。

日本のメディアでも既に報じられている通り、3/12に行われたマクロン大統領の演説によって、フランスの全ての学校で無期限の休校措置が取られることとなりました。
(その後、3/16に行われた演説で、フランス全土で15日間の外出制限令が発動。)

現在、HECのMBAコースでの感染者の報告はありませんが、グランゼコールの学生などで少数ですが感染者が出ている模様です。

HECでは3/16から1週間全てのクラスが休みとなり、3/23より完全オンラインでの授業再開を予定しています。この措置は事態が改善するまで無期限で実施されることとなっており、4月から始まる予定の新学期も、当面の間オンラインのみでの開講を余儀なくされる可能性が高いです。

また、HECのMBAの特色の一つである、フランス陸軍協力のリーダーシップ研修も既に秋への延期が決まっている他、他大学を招いて行うスポーツ大会のMBATも、5月開催の是非について検討しているとのことです。

S19は4月からの学期は選択科目の受講期間であったため、個人的に(恐らく多くの学生がそれぞれに)楽しみにしていた科目が多く、当面の間授業がオンラインとならざるを得ない見通しとなり、本当に残念に思っています。

上記のように、アカデミック、カリキュラムの面では甚大な悪影響が出ていることは否定できません。どうして自分の留学期間にこの様なことが起きてしまうのか。。。と誰かを恨みたい気持ちになります。しかしながら、(あくまで筆者個人の見解ですが)3月上旬から現在に至るこの危機を、HECの特色である超ダイバーシティ環境で迎えたことは、ある意味では貴重な経験と思っています。

以下、自身の備忘の意味も含めて、3/15の外出制限令に至るまでのHECやフランス国内の雰囲気の時系列と、筆者の雑感を記しておきます。

・1月中旬から2月中旬
中国武漢を中心とするエピデミックについて、完全に対岸の火事という意識。一方、パリ市内では地下鉄で「コロナ!」と言われた日本人同級生も出てくるなど、やや差別的な言動が散見されるとの話はあったが、基本的に生活への影響はなし。

・2月下旬
イタリアで感染者が急増。2月中旬の1週間休みでミラノ・ベネチアに旅行していた日本人同級生に一時隔離措置がなされるたほか、スーパーではトイレットペーパーやイタリア産のパスタが品薄になり始めるなど、少しずつフランス国内でも影響が見え始める。一方、学校の運営自体にはほぼ影響はなく、ジャパンウィーク(2月最終週)も無事開催。

・3月上旬
フランスでの感染者が増加し始める。中国人同級生の一部が、感染リスクの回避を理由に授業を欠席し始める。学生の間でもコロナに関する話題が少しずつ増え始め、教授も「今回がみんなでクラスで授業を受けられる最後かもしれないな。。。」等と授業中に仄めかすなど、徐々にリスクが意識され始める。一方で、多くの学生の間では自粛・警戒のムードはほとんど見られない。教室で手を覆わず咳をする学生もいるほど。

・3月10日頃
フランスでの感染が一気に拡大。学校側は希望するすべての学生に対して、授業の欠席とZoomを利用したオンラインでの受講を容認。一気に警戒感が高まり、クラスへの出席割合は最終的に20%程度まで低下。
S19全体Whatappグループ上で同級生間の諍いが散発的に発生。(後述)

・3月12日
マクロン大統領の演説を受け、翌13日からスーパーや薬局等の一部の店舗以外の全ての閉鎖が決定。また、16日からのフランス国内の全ての学校が休校が決定。(一方、週末の選挙は予定通り実施...)外出禁止令が出る可能性も意識されるようになり、翌13日は多くの人が買いだめに走る。平日にもかかわらずスーパーは朝から大混雑。

・3月15日
フランス地方選挙投票日。天気が良かったため、先日の大統領演説にも関わらず多くの人が外に繰り出し、公園に人だかりができる。(後述の「パーティ発言」も同様ですが、市民の危機意識の低さに個人的に驚愕。)

・3月16日
日中、学校から寮に住む学生に対し、可能な限り寮を出て自宅に帰るように要請が出る。(12日の政府発表を受けて、キャンパス内の食堂・カフェでの食事提供が難しくなるため)
夜、マクロン大統領が演説し、翌日からの外出制限令の発動を発表。これを受け、HECのキャンパス内に住む学生も、他の学生との接触は全面的に禁止され、自室にロックダウン。キャンパス外に出る際は政府所定の許可証を携帯する必要あり。

上記の中で印象的だったのは、3月10日前後に起きた、学年全体のWhatsappグループで起きた以下のような諍いです。
  1. 一部学生が「私達のような若い世代はコロナに感染したって死なないのだから、いつも通り寮でグラス片手にパーティをしていればいい。私たちには関係ない。」と発言。母国で大きな被害が出ている国の学生、子供の居る学生などがこの発言を強く非難。(しかし、これ以降の外出禁止令が発動するまで、一部学生はパーティを継続)
  2. 一部学生がアジア諸国を煽る、揶揄する発言・画像・ネット記事を投稿し、これらの国の出身学生が激怒。(これらの騒動の中で、複数のアジア人学生がWhatsappグループを退会。)
1のようなラテン諸国での危機意識・衛生意識の低さは日本でも既に報道されている通りです。

2のような点についても、市井では、欧米を中心に中国人・アジア人に対して差別が起きていることが数多く報道されており、この様なことは一般には珍しくないのかもしれません。

しかし、投稿をした学生は、本来は多様性を謳うHECの理念に共感して入学してきた学生のはずです。そんな彼らであっても、この様なinsensitiveで軽率な言動を、半年間を共に過ごし学んできた同級生に対して、しかも学年全体が見ているテキストベースのやりとりで行ってしまうという考え難いことが、現実に起きてしまいました。

多様性を受容するということの意義は多方面で叫ばれており、多くの人に理解されていると思います。HECの授業でも耳にタコが出来るほど扱ってきました。しかし、現在のようなストレスのかかった環境下でも、自身の言動が受け手のどの様な感情を惹起するかを想像する姿勢を維持する簡単ではないということを実感させられました。

一方で、これらのやり取りを見て、多くの学生が仲裁に入り、場の和を保とうと懸命に努力したことは、HECのコミュニティの連帯の強さを示しているものと感じました。現在、多くの学生がキャンパス内の寮にロックダウン(キャンパス内は集団行動しない限りは健康のためのジョギングや散歩、買い物などは許可されています)されている状態が続いていますが、Student RepやMBA Councilがリーダーシップをとって、情報の共有や学生同士の心のケアを行われており、この危機によってコミュニティの連帯がより強化されたものと感じています。

今後も当ブログでは、新型コロナウイルス問題に対するHECの対応に関してアップデートを行っていく予定です。(そのほかの通常のカリキュラム、課外活動等の情報についても、受験生への情報提供の継続の観点からこれまで通り適宜更新を行ってまいります。)

世界中で感染者が増え続け、多くの方が亡くなっており、自分自身や家族、友人もいつ感染してもおかしくない状況です。一刻も早く事態が改善に向かうことを切に願っています。

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